古来から日本の人々の生活を支えている建築法・木造建築。その設計を専門的に扱っているのが、神奈川県横浜市の株式会社創建設計様です。通常はコンセプトやデザインを担当する「意匠設計」と、どのように建物として成り立たせるかを力学的に構造計算する「構造設計」のどちらか専業で行われることが多い建築業界。株式会社創建設計様は、その両方を一貫して受け持つことができる数少ない企業です。「意匠」と「構造」の両方に対応可能なことから、新築住宅の設計を主な事業にしながらも、リフォームや大型建築にも対応できる、まさに木造建築の専門企業。比較的残業が多いといわれる建築業界で、ユースエール認定を取得した経緯や仕事の考え方について、代表取締役の鈴木裕二さんにお話を聞いてきました。
鈴木裕二さん(代表取締役)
- 代表取締役に聞きました
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―はじめに、事業内容を教えてください。
主な事業内容は、木造建築専門の設計です。建築業界では通常、「意匠設計」と「構造設計」のどちらかのみを担当する会社が多いのですが、当社ではどちらも対応しておりますので、意匠から構造まで一貫してできることが強みとなっています。意匠設計の会社が、構造設計の協力会社へ外注するというのが業界の基本的な流れになっているので、珍しいことだと思います。会社を立ち上げた当初は意匠建築専門だったのですが、プランを作るときに構造を知らないといい建築物はできないと思い、もう一度学校に通い、勉強し直しました。そのおかげで構造的に無理な設計をしなくなりましたし、仕事の幅も広がり、スピード感も上がりました。新築だけでなく、リフォームの際にも、構造計算で安全性を確認できるので、他で断られた方が当社へご相談に来られるということもあります。
―他に会社としての強みはありますか?
木造の設計事務所というと4~5人程度の少人数の会社が多い中、10人以上の社員がいる木造建築専門で設計を請け負っている会社は少ないですね。今は4チームに分かれて仕事を進めています。社員が少ないと仕事が集中したときに残業が増えたり、有給を取りづらいなど、どうしても労働時間が多くなる傾向があります。それに社員が多いことによって、少人数では時間がかかりすぎる大きな木造建築の構造計算や10棟以上並ぶ建売の現場を一度に引き受けられる利点もあります。
―ユースエール認定を取得しようと思ったきっかけはありましたか?
もともと、建築業界は残業が多いといわれている業界です。最近は改善されてきていますが、長時間労働や休日出勤も多く、定期的に人が辞めていくような業界でもありました。当社は社員一人一人を大切にして長く続けてほしいと思ったので、残業を少なくするなど負担を減らし、プライベートがより充実することで仕事にもやりがいを持てる会社にしていこうと考えています。採用を始めてから16年になるのですが、今年の3月で10年勤続者が3名になります。今後も働きやすい企業として続けていくために人材を確保したいと考えていたので、ユースエール認定の取得を決めました。
―ユースエール認定を取得する上で苦労したことはありますか?
残業や休日、有給などの管理をしているつもりでしたが、実際に数字で見てみると基準値に満たない箇所が見つかり、そこは苦労しました。やはり業界的に遅くまで残業するのが当たり前という考えがあるので、業界に長くいて信頼できる社員ほど自分で仕事をかかえこみ、残業している傾向でした。かといって仕事量は減らせないというジレンマもありました。そこで、建設の社員を3名程度のグループに分けて、グループで仕事を共有して作業することで、特定の人に作業が集中することがなくなるようにし、徐々に残業を減らしていくように会社全体で取り組みました。
―ユースエール認定を取得してメリットはありましたか?
ハローワークの入口に入ると求人広告が目立つところにあり、優遇されているなと感じています。また、窓口では優先的に紹介していただけていますね。また、労働局主催の面接会にお声がけいただいて、一人採用することができたので少しづつ採用に関するメリットを感じてきています。
―他に取り組んでいることはありますか?
「えるぼし認定」と「くるみん認定」も取得しています。当社は男女比率が4:6で6割は女性です。結婚や妊娠、出産をされるとそのまま建築業界を辞める方が多くいますが、そのような方でも長期的に働きやすい職場作りを目指しています。10年近くブランクがあった方も、また建築の仕事をしたいとパートなどで働きに来てくださり助かっています。今後はリモートワークの導入も検討しています。
―最後に、仕事で大切だと思うことや採用のポイントを教えてください。
ごまかしたりせず、当たり前のことを当たり前にやることですね。見えないからといって手を抜いてはいけません。採用の際はとにかく本人がやりたいと思っていることと、当社でやっていることが一致するのが一番だと思っています。木造建築をしたいと思っていて、同じ考えを持ってくれている人たちは長く勤めてくれています。今後も建築を長く続けたいと思っている方にぜひ来て欲しいですね。
- 若手社員に聞きました
下道毬加さん(2018年入社)
―創建設計に入社したきっかけは何ですか?
私は、祖父と父親が木造大工をしているという家系で生まれました。将来は建築に関われる仕事に就きたいという想いがかねてからあり、専門学校に進学したのですが、学生時代から就職課で待遇に関しては期待しないようにと言われていたんです。木造の一般住宅がメインであることを第一に企業を探していたのですが、創建設計は女性が多いので働きやすい環境なのかなと思っていました。面接時には、残業も少なく、結婚や出産をしたとしてもパートとして復帰した人もいるなどという話もしてもらえました。
―入社してみて、実際にいかがでしたか?
待遇面など、いい意味で建築業界に対して想像していたイメージと違うなと思いました。社内の約6割が女性社員なのですが、女性の先輩がいることへの安心感も大きかったです。建築業界はまだまだ男性が多い業界なので、人数が多ければいいというわけではありませんが、自分以外に女性がいるということは重要なのかなと思いました。悩みなども気軽に相談できるところも働きやすさにつながっています。
―お仕事はどんな内容からスタートしましたか?
最初は先輩に教えていただきながら図面を描き、構造計算の入力をしていきます。そうして、計算と図面を通して理解を深めていきます。学んでいくと専門知識が増えていって、父と家で話すことも多くなったりして、成長できているなと感じますね。
―お仕事をしていて、どんなときにやりがいを感じるのでしょうか?
今までできなかったことができるようになり、それが積み重なりできることが増えたことに気づいたときです。図面を描くことしかできなかったのに、計算ができるようになり、次に進めているなと感じます。これからは構造計算を極めていきたいです。また、やりがいとは異なりますが、同期で入社した守屋さんは申請や意匠を担当しているのですが、私とは違う内容の仕事をしているのを間近で見ていて興味が湧きますし、とても刺激をもらっています。