左:藤田遥さん(店舗運営、牧場業務・2022年入社)
中央:岡崎晋也さん(代表取締役)
右:上江洲真央さん(レストラン運営、牧場業務・2022年入社)
愛媛県西予市のゆうぼくは、自社牧場で成長促進剤を与えずに育てたオリジナルブランドの「はなが牛」と「はなが豚」を生産し、添加物を使わないソーセージなどに加工して販売、レストランも経営しています。安心できる素材とおいしさを追求する取り組みに共感して入社する若者が多く、正社員の約7割が20歳代です。ユースエール認定を求人や会社説明会で活用していると話す岡崎晋也社長と、大阪と沖縄からそれぞれ移住して働く入社1年目の藤田遥さんと上江洲真央さんに仕事のやりがいなどのお話を伺いました。
- 岡崎社長に聞きました
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━はじめに事業内容を教えてください。
1980年に父が牛2頭から始めた牧場を、システムエンジニアだった私が2013年に引き継ぎました。現在は牛約600頭、豚約50頭を常時育てています。生産した牛や豚の大半を、精肉やハンバーグなどの加工品として店舗や通販で販売しています。今では西予市のほか、県内の西条市と松山市にも直営レストランや小売店を出店しています。
━会社の特徴や事業の強みを伺えますか。
牛と豚の肥育では、体を大きくする効果のある成長促進剤は与えず、経験や研究に基いた独自の配合飼料で育てています。ソーセージやハンバーグなどの加工品には化学調味料や保存料などの添加物を使わないことを基本ポリシーにしています。子どもたちなど化学的な物質に反応しやすいアレルギー体質の方にも安心しておいしく食べていただきたいという考えから取り組んでいます。そうした生産・加工へのこだわりが強みです。「はなが牛」の名称は2018年に商標登録し、認知拡大に努めています。
━ホームページを拝見しました。若いスタッフが多いですね。
21名いる正社員のうち15名が20歳代で、約4割が女性です。正社員の半数にあたる10名が、県外や県内から職場の近くに移り住んで働いています。
━2020年にユースエールの認定を受けました。なぜ取得しようと思われたのですか。
求人などでお世話になっていたハローワークの職員の方から「認定を取りませんか」と提案をいただいたことがきっかけでした。提出書類をそろえるのが大変そうで、しばらく触らずにいたのですが、「申請手続きをしますよ」と若いスタッフが言ってくれて、申請自体はスムーズに進んで取得できました。
━認定取得のメリット、良かったことはありますか。
オフィシャル(公認)企業としての箔が付くことにメリットを感じています。民間の大手求人情報サイトを利用して会社の求人情報を載せていますが、そこにもユースエール認定マークを掲載しています。学生は求人サイトを見てから説明会に参加するので、志望意欲の高い学生は、事前にユースエールとは何かを調べるはずです。会社説明のときに、残業時間がどれくらいとか、有給休暇を平均何日取得しているとか、細かい情報を羅列しなくても、雇用環境を整えていることを国が認めた「ユースエール認定を受けています」で話が済みます。オンラインを含めると毎年数十名の学生がインターンシップに参加します。学生たちがユースエールの取得をどう捉えているのかはわかりませんが、ユースエールが会社のポリシーを伝えやすくする材料になっていることは確かです。
━人材育成の考え方や取り組みを教えてください。
自分で仕事を選択する意識をもつことを若い社員に求めています。入社面接では「何がしたいですか」とまず聞きます。堆肥の袋詰め販売をしたいと答えて2年前に入社した社員は、実際にその仕事を始めました。押し付けられた仕事は退屈で、やりがいが生まれにくいものです。教育体制が整備された企業に勝るのは、畜産や食品加工、販売、レストラン事業など食に関する幅広い経験が得られるところだと思います。若い人の意思を尊重して好奇心旺盛に働ける環境をつくることに力を入れています。
━社員の自発性は育っていますか。
食に関する知識を高めようと資格取得に熱心な社員が増えています。入社2年目の男性社員はこの1年で、お肉博士1級と食品表示検定中級、ITの知識と技能を問う国家資格の基本情報技術者の3つを取りました。その彼に刺激を受けてお肉博士の資格をほかに2人取っています。「学ぶ姿勢」は会社が求める人材としての評価項目の一つでもあり、受験料は会社負担、受験日は勤務扱いにしています。
また、入社2年目の社員の意見をきっかけに2022年は販売店舗とレストランの休みを増やしました。毎週月曜日と第1、第3火曜日が定休日だったのを火曜日も毎週休みにしました。火曜に店を閉めて、一部社員が出勤して通販の発送作業などを済ませ、開店時は対面販売に集中できる体制にして売り上げを伸ばしたいという、働き方の改善案でした。経営者としては売り上げが減る心配がありましたが、結果的にほとんど変わらず、火曜日の出勤者も減るので、社員も休みが取りやすくなりました。
━最後に入社を志望する若い人へのメッセージをお願いします。
この会社を選んで移住してきた若い人がたくさんいます。そういう人たちが後悔しないように、私も「やりがい」となるものを探します。受け身ではなく、自分の意思や考えをもった方が来てくれることを望んでいます。
- 2022年入社の藤田遥さんと上江洲真央さんに聞きました
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━入社を志望した理由から教えてください。
藤田さん)動物に直接関わる仕事を会社選びの軸に考えて民間の求人情報サイトで探していたときに、ゆうぼくを知りました。生産から加工・販売まで一貫した6次産業を実践していることに魅力を感じて、インターンシップを受けて入社しました。
上江洲さん)私も6次産業が学べる会社を探すなかで、求人情報サイトでゆうぼくを見つけました。実家は沖縄の石垣島で牧場を経営し、石垣牛を育てています。ここで学んだことをいずれは家業に活かしたいと思って入りました。
━お二人とも6次産業に興味があったのですね。
藤田さん)自分たちで育てた牛や豚を加工してお客様に届けて味わってもらう。その一連のプロセスに関われる場所は少ないですし、ここはレストランもあるのでお客様の反応が直接目にできます。そこが良いなと思いました。
━求人情報サイトの会社案内にユースエールの認定マークがあったのは覚えていますか。
上江洲さん)印象に残っています。ユースエール制度の細かい内容までは知りませんでしたが、若い人が働きやすい環境であることを厚生労働省が認めているのだから、良い取り組みをしていて安心できる会社だろうと思いました。
━現在の仕事内容とやりがいを教えてください。
藤田さん)自社の精肉店で肉をカットし、店舗で販売しています。併せて月に3、4日は牧場で牛の餌やりや牛舎の掃除など肥育に関わる仕事をしています。肉には人気部位とそうでない部位があって、店舗販売や予約注文、通販、卸売といった販路全体に、どうバランスよく配分するかが難しいのですが、少しずつつかめていく過程が楽しく、やりがいになっています。
上江洲さん)直営レストランでキッチンとホール業務を中心に、私も月3、4日は牧場の仕事をしています。やりがいを感じるのは、お客様から「おいしかったよ」と言っていただけるときです。自分たちが育てた牛の味の評価を直接聞けることはあまりない体験なので、おいしく調理してもてなしたいなと思います。
━今後の仕事の目標を教えてください。
上江洲さん)コロナ禍もあって半年以上休業していたレストランのディナーを2022年12月に再開しました。地元の方や県外からのお客様にも満足していただけるように盛り上げていきたいです。
藤田さん)仕事を教えていただいた1つ上の先輩が近く異動されるので、本店の精肉業務を私が回していくことになります。入社2年目で責任ある仕事にプレッシャーもありますが、担当させてもらえる貴重な機会なのでがんばりたいと思います。
━最後に入社を考えている人へのメッセージをお願いします。
藤田さん)食に関して学べることがすべてそろっています。年の近い社員が多いので相談しやすく、入社間もない社員の意見も聞いてくれる風通しの良い会社です。
上江洲さん)この会社に入ってから、やりたいことはやりたいと言えるようになり、その気持ちを先輩方が温かくサポートしてくれます。生産、加工、販売といろいろと学べて貴重な経験が積める会社だと思います。