左:秦朋央さん(庶務・経理担当)
右:坂井紗奈江さん(准看護師・2020年入社)
熊本県甲佐町の谷田(やつだ)病院は、高齢化が進む地域住民のニーズに合わせて介護施設などを併設し、在宅医療にも力を入れている地域密着型の病院です。看護師や介護スタッフなどの新卒を毎年5名前後採用し、手厚い新人教育や資格取得支援制度を整えています。若者の採用・育成に積極的であることをアピールしようとユースエール認定を2018年に取得しました。庶務・経理担当の秦朋央さんと広報リクルーティング主任の松永崇さんにその経緯などを、また、ユースエール認定が志望した理由の一つと話す2020年入社で准看護師の坂井紗奈江さんに仕事のやりがいなどについて伺いました。
右:松永崇さん(広報リクルーティング主任)
- 秦さんと松永主任に聞きました
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━はじめに事業内容を教えてください。
秦さん)内科、小児科、リハビリテーション科、整形外科に糖尿病、もの忘れ外来など高齢化が進む地域住民を幅広く診療できる外来と、入院病棟は、医療療養病床や在宅復帰に向けた治療やリハビリを目的とする地域包括ケア病床など計99病床を備えています。法人全体の職員は約280名で、そのうち看護師と准看護師が約90名です。職員全体でみると20歳代は2割強で、看護師や理学療法士などのリハビリ部門、管理栄養士や調理スタッフに若手が多くいます。
━病院の特徴を伺えますか。
秦さん)1953年の開業から、地域との関わりを大切にしたコミュニティ・ホスピタルを目指して、「患者さんに寄り添う」医療や福祉に取り組んできました。予防医療の健診から外来診療、入院治療のほか、谷田病院を中心に構成する谷田ヘルスケアグループには特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがあり、入院患者さんの回復やニーズを踏まえて各種施設につなげています。また、2022年には在宅医療部を新設し、高齢の患者さんが一人での通院が困難になっても、住み慣れた自宅で療養できる体制をつくりました。在宅医療には現在200名を超える患者さんが登録されています。
━2018年にユースエールの認定を受けました。なぜ取得しようと思われたのですか。
秦さん)法人のイメージアップと職員の採用や定着につながるような国の認定制度を取りたいと考えて、いくつか検討した結果、若者の採用と育成に積極的であることをアピールできるのはユースエールだろうということで取ることにしました。
松永主任)看護師不足は続いていますし、都市部から離れた場所にあるので採用に苦労してきました。当院は特に新人教育や、資格はあるのに看護の職を離れている潜在看護師の支援に力を入れていて、意欲的な人を制度面で支えてきました。また、育児時短制度や託児施設の導入などにより、子育てしながら離職せずに働きやすい環境も整えています。そうした誇れる取り組みを、国のお墨付きを得て広く知ってもらいたいと思いました。ユースエール認定は熊本県の医療機関としては2番目の取得です。
━力を入れている新人教育とはどのような内容ですか。
松永主任)患者さんの命に関わる仕事だけに新人看護師は大きな不安を抱えます。わからないことがあればすぐに聞けるように、1人の新人に対してベテランと若手の2人の看護師を指導役につけるプリセプター制度を設けています。2人体制にするのは、どちらかが必ず対応できるようにすることと、若手の指導役がベテラン看護師を見習い、指導力を身に付けるためです。また、定期的な面接で個々人の背景や習熟状況を共有しながら、マンツーマンの教育サポートを心掛けています。
━ユースエールを取得して良かったと感じることはありますか。
松永主任)ハローワークの職員の方が谷田病院のことを理解されて、「働きやすい病院ですよ」と求職者に説明してくださっているようです。そうした声を就活生から聞きました。熊本労働局やハローワークが主催する合同就職説明会にもよくお誘いをいただきます。国の認定制度なので信頼性が高く、就職説明会では社内教育制度やワーク・ライフ・バランスの取り組みをアピールしやすくなりました。看護専門学校で行う会社説明会では先生方が、この病院に生徒を送り出しても大丈夫だと思ってもらえることが多く、認定を得て良かったと感じています。
━認定の申請手続きなどで苦労したことはありましたか。
秦さん)月平均所定外労働時間や有給休暇の取得率などの要件はもともとクリアしていたので、書類作成の時間が必要だった程度で、特に苦労したことはありませんでした。
━さらに伝えたい職場の魅力があれば教えてください。
秦さん)意欲のある人を応援する風土があることです。介護士が准看護師を、また、准看護師が正看護師を目指して看護専門学校に通う際、学校にかかる費用一切を奨学金として病院が負担します。規定の年数を勤めれば返済不要です。また、奨学金は支給しないが、学校に通う時間を「研修」とみなして給与を支給するケースもあります。支援の仕方は本人の希望を聞いて柔軟に対応しています。一定の実務経験を経てから、介護福祉士やケアマネージャーの資格にチャレンジする職員も多いです。このほかにも業務に関係する資格取得の費用は病院が全額負担していますし、救急病院の現場でリハビリを学びたいと希望した若手職員を約2カ月間、研修として派遣したこともあります。
松永主任)学校に通ったり、院外研修に参加できたりするのは、医療法に基づいた病院の人員配置基準よりもゆとりのある人員体制を敷いているからです。そこが新人教育に割ける労力や働きやすさにもつながっていると思います。こうした取り組みが実を結び、直近5年間の新卒看護師は定着率100%です。
━最後に入社を志望する若い人へのメッセージをお願いします。
秦さん)自ら手を挙げれば、若手でもやりたいことをやらせてもらえる風土があります。医療や福祉を通して何かやりたいこと、頑張ってみたいことがある方はぜひ応募してください。全力で応援します。
- 2020年入社の坂井紗奈江さんに聞きました
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━志望した理由から教えてください。
谷田病院のある甲佐町の隣り町に住んでいて、看護専門学校を卒業したら、この地域に密着した病院で働きたいと考えていました。谷田病院のホームページを見たときに、ユースエール認定企業で、残業が少なく働きやすい病院だと書かれていたのを読んで、国の認定をとっているのなら安心だと思って志望しました。職場見学のときも、皆さん笑顔で迎えてくれて、看護部長も優しい方で職場環境の良さが伝わってきました。
━現在の仕事内容とやりがいを伺えますか。
手術や治療を終えた患者さんや、自宅や介護施設などから緊急入院した患者さんの在宅・生活復帰支援を行う地域包括ケア病棟に勤務しています。医師や看護師の指示のもと、診療補助や注射や点滴の処置を行っています。先輩方と楽しく仕事ができて、優しい患者さんが多いので、そうした環境のなかでやりがいは日々感じています。今は正看護師を目指して夜間の看護専門学校にも通っています。
━働きながら学校に通っているわけですね。両立の様子と理由を教えてもらえますか。
准看護師から正看護師になるためには2年間の課程を修了する必要があります。就職2年目の2021年4月から通い始めました。朝8時半から通常は17時半までの勤務を1時間半繰り上げてもらって16時で終え、熊本市内にある学校で17時50分からの授業を平日受けています。土日は夜勤をし、休みは月曜と平日のどこか1日です。働き始めて知識のなさを痛感して、もっと勉強しなきゃいけないと思ったことがきっかけでした。先輩方に相談したときに、准看護師として働きながら正看護師の資格を取った方がいることを聞き、応援してくれる言葉に背中を押されて通うことにしました。病院から奨学金もいただいて自己負担なく通えて助かっています。
━仕事と学校の両立は大変ではありませんか。
学校に行くため16時までに業務を終わらせようとするのですが、最初はそれができなくて、周りに迷惑をかけていると思い込んで悩んだ時期がありました。入社1年目の私のプリセプターだった先輩が様子を察して、「大丈夫?」と声をかけてくれました。看護師長にも話が伝わって面談の場を持っていただき、悩みを率直に話せたことで、そこから前に進むことができました。
━今後の仕事の目標を教えてください。
正看護師になって自分に自信をつけ、病院の即戦力になりたいと思います。高齢の患者さんは在宅での医療を望まれるケースが増えているので、病院が進めている在宅医療の看護も身に付けていきたいです。
━最後に入社を考えている人へのメッセージをお願いします。
人がとにかく温かくやさしい職場です。入社1年目は先輩看護師のプリセプターが悩みを受け止めてくれて、一緒になって働き、指導してくださるので不安を抱え込むことがありません。安心して働ける職場だと思います。