「ユースエール認定企業」インタビュー

  • 一般土木建築工事業
  • 2024.01.25
【写真1】天元工業トップ写真

左:加藤航太さん(取締役)
中央:佐藤吉幸さん(工事部・2019年入社)
右:加藤ゆかりさん(代表取締役専務)


三重県桑名市の天元工業は10年近く前、入社1年目の社員2人が相次いで退職する事態に直面しました。加藤ゆかり代表取締役専務は「若手が働きたいと思う環境を整えなければ会社に先はない」と考え、さまざまな取り組みを始めます。その結果、この5年は35歳未満の離職はなく、従業員約30人の3割ほどを20代が占めるに至りました。どのようにして「若手の離職ゼロの会社」に変えたのか。加藤専務と加藤航太取締役に話を伺い、仕事の面白さなどについて2019年入社の佐藤吉幸さんに聞きました。


【写真2】加藤専務と航太取締役
加藤ゆかり専務と加藤航太取締役に聞きました
━はじめに会社の概要を教えてください。

加藤専務)主に公共土木工事を続けてきた創業45年目の会社です。社長である夫が今、病気療養中のため、私と息子の航太の2人で経営しています。関わっている工事は、道路改良舗装や海岸の高潮対策、軟弱地盤の改良などです。ここ長島地区は堤防で囲まれた海抜ゼロメートル地帯で、大雨が降ると水がたまるため排水機が多数設置されています。その排水機場の新設やメンテナンスも受注しています。


━会社の特徴や事業の強みを伺えますか。

加藤専務)専門工事を除き、一般土木の施工管理と施工をすべて自社で行っています。社長が「災害時にすぐに駆けつけて活躍できなければ、土建屋をやっている意味がない」という強い思いを持っているため、人材、資材、重機のすべてを備えているんです。2019年に桑名市内で川が氾濫した時も、作業員と重機をすぐに出して災害対応にあたりました。

【写真3】加藤専務
━従業員の約3割が20代とのことですが、これは以前からですか。

加藤専務)10年近く前は10~20代は1人だけでした。その頃、新入社員の2人が1年持たずに続けて辞めてしまうことがありました。1人目の時は「辛抱が足りないな」と思ったのですが、2人目で「会社の責任だ」と思い至りました。「今時の若い子は」ってよく使われるフレーズですけど、「今時の若い子しかいないのだから、今時の若い子が働きたいと思う環境を整えないと会社に先はない」と、そのときから考えるようになりました。


━どのように職場環境を整えていったのでしょうか。

加藤専務)働き方関連のセミナーに行ったり、労働局の職員の方や高校の進路指導の先生の考えを聞いたりして試行錯誤を続けました。社員と相談しながら年間休日を増やしたり、有給休暇を取りやすくしたりと、会社のあり方を変えていきました。新人教育も外部に委託して約2カ月半の研修を導入しました。年齢が離れていると、なかなか気持ちがわからないので面談を増やしたのですが、そうしたコミュニケーションが重要だったように思います。若手が定着して人数が増えてくると、先輩が後輩をケアする良い循環が生まれてきて、会社の雰囲気が良くなっていきました。


航太取締役)ベテラン社員も丁寧に指導することに協力してくれて、現場で作業をするときの立ち位置やスコップの持ち方から教えて、うまくできたら、「よくやったな」と褒めてくれました。それが若手の励みになっています。年配の社員たちの若い頃は、へとへとになるまで働き、わからないことがあっても誰も教えてくれないような時代でしたが、考え方を変えて、若い人が働きやすい環境を作ってくれています。


【写真4】航太取締役
━2023年にユースエールの認定を受けました。なぜ取得しようと思われたのですか。

加藤専務)建設業は今、求人を出してもなかなか応募者がいません。そのため、私たちも人材確保を目的に、以前から「ユースエールを取りたい」と思っていたんです。雇用環境を整えて残業を減らし、有給休暇の取得率を上げて、育児休業を取る社員も現れて、ユースエールの認定を得る条件をそろえていきました。

━認定を取得して良かったことはありますか。

航太取締役)地元のテレビや新聞で紹介されたことで、取引先だけでなく、道ですれ違った人からも声をかけていただくことがありました。やっぱりうれしいですし、多くの人に天元工業という名前を知ってもらうきっかけになりました。公共工事の発注元となる自治体からの評価も得られ、イメージアップになっています。すごく影響力を感じる認定です。


━最後に入社を希望する若い人へのメッセージをお願いします。

航太取締役)手際が悪いとか、技能がないということで責めたり怒ったりする人はこの会社にはいません。ベテラン社員や若手の先輩が丁寧に教えてくれます。一生懸命に真面目に仕事に取り組む人と一緒に働いて、高め合っていけたらと思います。


【写真5】佐藤さん右向き
2019年入社の佐藤吉幸さんに聞きました
━入社した経緯を教えてください。

取締役の航太さんとは大学と学年が同じで、出会って仲良くなった縁で誘っていただきました。私が入った当初はまだ航太さんは入社していませんでしたが、いずれ会社を引っ張っていくのだろうから、その時に力になりたいと考えました。


━入社から現在までの仕事の内容を教えてください。

入社時から、現場全体を管理する施工管理を目指すことは決まっていましたが、最初は全員、現場での作業に従事する会社の方針に沿って、3年目までは工事現場で体を動かす仕事がメインでした。その後、施工管理の手伝いから始め、だんだんとその割合が増えてきて、今は施工管理が中心です。資材や人、機械の手配をし、工程を組む仕事をしています。

【写真6】佐藤さん左向き
━現場作業から始めるやり方をどう思いましたか。

施工管理をするには国家資格が必要なのですが、現場での作業経験があると、勉強しているときに状況をイメージしやすい利点があります。業務で工程を組む場合も、現場の経験があると所要時間が感覚的にわかります。施工管理だけを行う会社では現場経験が積めないので、この会社で良かったと思っています。


━入社5年目ですが、働く環境の変化を感じますか。

感じています。入社当時は週休2日制ではなく、隔週で土曜日は出勤していましたが、だんだんと年間休日や有給休暇が増えていき、今では完全週休2日になりました。働きやすくなっているのを実感します。


━仕事のやりがいや面白さをどんなところに感じていますか。

ものづくりの面白さを感じています。公園の工事に携わったことがあるのですが、近くを通った時に子どもが遊んでいるのを見て、良かったなと思いました。また、任せてもらえる仕事の量が増えてきて、自分の成長も感じられます。仕事の難易度が上がっていくのをクリアするのが楽しいですね。


━会社の好きなところはどこですか。

社員のことを考えて福利厚生を充実させているところです。忘年会や新年会、花見、長期休暇前の食事会などの年間行事が多く、楽しんでいます。周りの友だちが「そんなにやってくれる会社はないよ」って言うほどです。社員数の多い会社だと、社内の集まりで、「知らない上司の話を聞かされるのか」と暗い気持ちになりそうですが、この会社は上から下までみんな知っているので、変に緊張することがありません。


━仕事における今後の目標は何でしょうか。

1級土木施工管理技士の資格を取得し、1人で工事を任せてもらって満足のいく仕事ができるようになりたいです。


━入社を考えている人へのメッセージをお願いします。

今いる若手は全員、この仕事の経験がありませんでした。未経験者の受け入れ体制ができているため、何も心配はいりません。若手が増えたので、ちょっとしたことでも相談しやすい環境があります。建設業に興味がある方はぜひ一度、見学に来てください。


【写真7】社屋外観
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