左:石原弘樹さん(試験室・2020年入社)
中央:篠原大助さん(工場長)
右:桐渕修平さん(製造・出荷係・2019年入社)
群馬県嬬恋村の西吾妻生コンクリートは、2019年の台風19号の豪雨で氾濫した吾妻川沿いにあります。今も道路や河川などの復旧工事に生コンクリートを供給しています。篠原大助工場長に、2018年度に認定を受けたユースエール取得のいきさつなどについて、故郷の災害復旧の力になりたいと同社最年少で入社した22歳の石原弘樹さんと、3年前に30歳で入社した桐渕修平さんに仕事のやりがいなどをうかがいました。
- 篠原工場長に聞きました
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━はじめに、事業内容を教えていただけますか。
生コンを製造してミキサー車で現場に運搬する業務をしています。主に公共工事に使われています。ここ嬬恋村は、2019年の台風19号の豪雨で吾妻川が氾濫し、川沿いの国道が約1キロに渡って崩落して、橋も流されました。その復旧作業が今も続いていて、護岸工事などの現場に毎日収めています。
━会社も台風被害を受けましたか。
会社の裏山が土砂崩れを起こして、深いところでは1メートルを超える土砂で埋まる被害を受けましたが、3日かけて土砂を取り除いて4日目にはコンクリートの製造を再開しました。村の復旧にコンクリートは欠かせないので。
━工場長からみた会社の強み、特徴を教えてください。
生コンは品質を保つために、練り混ぜてから1.5時間以内に現場に運び込むことが日本産業規格(JIS)で定められているので、配達エリアが限られます。その地域にとっては、なくてはならない存在であるだけに品質管理は徹底しています。JISマーク表示制度による製品認証を取得した工場であることも、取引先からの信用や評価につながっているので、そこが強みですね。
━ユースエール認定を2018年度に受けられましたが、きっかけは何ですか。
60歳を過ぎて定年が近い社員が何人かいましたので、ハローワークに求人申し込みに行ったときに、職員の方からユースエールの認定取得を勧められました。この仕事は若い人にはいまだに、きつい、汚い、危険といった3K職場のイメージがあるようで、募集してもなかなか応募がないんです。認定を受けることで、若者の育成に積極的で働きやすい環境だとアピールできて、ハローワークからも優先的に若者を紹介してもらえることを期待して、取ることにしました。
━申請手続きはスムーズに進みましたか。
正直、初年度は大変でした。認定基準を満たしていることを示す資料づくりで、社員の残業時間を調べてデータをまとめるのに手間がかかりましたね。仕事の合間に申請作業をしたので、提出するまで3カ月くらいかかったと思います。ハローワークの職員の方から、この書類はこういうまとめ方ですよと教わって、いろいろと助けてもらいました。最近は、わからないところはメールで教えてもらい、なんとか自分で整えられるようになりました。
━苦労して取得されたユースエールですが、求人での効果は感じますか。
ユースエールの認定を受ける前は、ハローワーク経由の応募はほとんどありませんでしたが、取得後は、「こういう方がいらっしゃいますが、どうですか」という連絡をいただくようになりました。職員の方が私たちの会社を覚えてくれて求職者に紹介していただいているのかなと思います。それと1回ですが、高校生が職場見学に来ましたね。
━3K職場のイメージがあると言われましたが、実際の働き方はどのような感じですか。
私が働き始めた30年前は土曜日も出勤していましたが、今は土曜は隔週休みですし、残業も月平均7、8時間程度です。有給休暇も年平均で16日取っています。私も子どもの学校行事には有給休暇を使いますし、休みは取りやすい職場です。この数年、災害復旧工事で忙しいなかでもそうした働き方ができて、安全管理も徹底していますから、3K職場ではないですよ。
━改めてこの仕事の魅力と、若い人へのメッセージをお願いします。
道路や橋、住宅の土台を、私たちのコンクリートが支えています。災害復旧工事もそうですが、安心安全な生活の基礎づくりに携わる仕事だというところに、私自身も魅力を感じています。会社では業務に関係する資格の取得を支援しています。コンクリート技士、コンクリート主任技士、コンクリート診断士のほか、車両系の資格など、取得に向けた講習会や受験料、参考書などの費用は会社が負担しています。チャレンジする人を応援していますので、向上心のある人はぜひ尋ねてきてください。
- 2020年入社の石原弘樹さんと、2019年入社の桐渕修平さんに聞きました
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━入社のきっかけは何ですか。
石原さん)この嬬恋村で生まれ育ったのですが、台風19号の豪雨で大きな被害を受けた地元の復旧で、自分に何かできることはないかと考えて、勤めていた高崎市のIT企業を辞めて実家に戻ってきました。建設会社で働く父親に相談して、この会社を紹介してもらいました。
桐渕さん)前職は自動車教習所の指導員だったのですが、結婚を控えて、もう少し給料の良いところがないかと転職先を探していたときに、指導していた教習生からこの職場を知って、ハローワークを通じて応募しました。
━現在の仕事内容と、どんなところにやりがいを感じているかを教えてください。
石原さん)入社してから試験室に所属して、製造出荷された生コンの品質管理業務にあたっています。出荷先の現場から固まる前のコンクリートを採取して持ち帰り、円柱状に固めて、どれだけの力(重さ)に耐えられるかをみる圧縮強度試験をします。使用する構造物に適した強度かをチェックする仕事です。生コンの製造会社というと、ミキサー車で運ぶ仕事しかイメージできなかったので、こういう仕事もあるんだと思いました。専門知識を増やしたいと思ってコンクリート技士の資格を取ろうと勉強中です。やりがいは、台風災害で崩れた道路がどんどん治っていく光景を見るときですね。自分が携わったことが形になって見えるので、災害復旧に貢献できていることが実感できます。
桐渕さん)入社したときは4トン車で生コンを運んでいましたが、今は製造・出荷係をしています。生コンはセメント、骨材、混和剤、水などを混ぜて製造しますが、すべてコンピューター管理で生産しています。その製造業務に加えて、お客さんから注文を受けて、ドライバーに配達先を伝える出荷業務にもあたっています。ちょうどこの業務についたころが、災害復旧工事のピークでした。大型ミキサー車で1回に運べる量は4立方メートルですが、何カ所もの現場から全体で300立方メートルを超える注文が来た日もあって、対応するのに大変でした。その日の作業が終わると、現場にいる監督さんから電話が入ります。そのときに「今日1日うまく回ったよ、ありがとう」と言われるような仕事をしたいと思っています。
━最後に、入社を考えている人へメッセージをお願いします。
桐渕さん)自分が運んだり、練ったり、強度を調べたりして携わったものが橋や道路などの建造物として形に残る、これは自分が作ったんだぞと誇れる仕事だと思います。そんな仕事に興味のある方に来てほしいですね。