「ユースエール認定企業」インタビュー

  • 製造業
  • 2017.12.25

菊地歯車株式会社

代表取締役社長 菊地義典様、総務財務部部長 菊地一雄様



認定企業の事業内容
―御社の事業内容をお聞かせください。

当社は社名の通り、歯車を製作している会社です。100%受注生産で、各種歯車、歯車装置の設計及び製造が主な事業になります。

当社は高精度な歯車を作ることを得意としており、鋼材を購入して切削加工、研磨加工、最終的な仕上げを行います。

当社の歯車は自動車関連、油圧機器、建設機械、航空宇宙などの分野に主に使われています。


―御社の歯車はどういったところで使われていますか。

自動車関連ではHONDA、スバルを中心に、すべてのメーカーで何らかの形で当社の歯車が使われております。航空宇宙ではH2Aロケットの部品の部分的な加工を行っています。ただH2Aロケットの仕事はたまに依頼が来る程度です。航空機の方ではエンジン部品の加工をメインに機体の部品加工も行っています。


―御社はなぜ歯車に特化されたのでしょうか。

元々、足利と桐生は繊維産業のさかんな地域で、創業者の祖父は繊維工場を経営していました。昭和15年に祖父が歯車の加工機を買ってきて、機織り工場のかたすみで歯車の仕事を受け始めたのが創業になります。祖父は昭和18年に戦死しますが、祖母と曾祖父が工場を続け、終戦間際に軍から鉄の供出を求められました。機織りの機械と歯車の機械とどちらを供出するか判断が求められ、機織りの機械を解体したら戦争が終わったのです。戦後、食い扶持を稼ぐためには歯車の加工機しかなかったというのが、当社の歯車メーカー専業としての出発点になります。


―では、もしもそのときに機織りの機械を残していたら…。

そうですね。繊維工業の会社になっていたでしょうね。どうなっていたかはわかりませんが。そういう決断が今につながっています。




ユースエール認定の取得理由
―ユースエール認定の取得理由をお聞かせください。

ユースエールについては、ハローワークから「くるみん」「えるぼし」などと一緒に、こういうものがあるとご紹介いただきました。

当社は会社の業績がよくても悪くても、世代のギャップを生まないように、新卒採用は継続的に力を入れて行っています。

少子高齢化が進みますと、新卒採用のハードルが上がっていくのは間違いないことです。それを公の機関でユースエールという形で認定していただくということで、上がっていくハードルを超えるための後押しをしてもらいたい、というのが一番の取得理由です。


―認定の取得にあたっては、どんなことをされましたか。

ユースエールの認定のために何か新たな取り組みをしたということではなく、いくつか制度をご紹介いただいたなかで、認定基準に達しているかどうかについてハローワークにお力添えをいただいて、取得できそうだということから認定の申請に着手しました。

認定の水準というものについて詳しく知りませんでしたし、当社の労働環境がどういうレベルにあるかも比較するものがありませんのでよくわからずにいました。今回、認定を受けることができましたので、ユースエールにつきましては毎年更新の手続きを行っていこうかと思います。会社としてもこの基準を維持していきたいと思っています。



ユースエール認定取得の効果
―ユースエール認定取得による効果は何かありますか。

昨年の暮れに認定をいただきましたので、そのあとの採用が一度ありました。その際に「当社はユースエール認定企業です」ということをアピールできたので、そういう面では認定を取得してよかったと思っています。

新入社員に「ユースエール認定企業に魅かれて入社した」ということを確認したわけではございませんが、非常に力強い後押しにはなっていると思っています。


―PRという点ではいかがですか。

認定をいただいた際、ハローワークや労働局のお力添えもありまして、労働局のホームページに載せていただきました。

また、足利市内の事業所では初めての認定ということもありまして、商工会議所の会報に認定の内容を掲載していただいております。

そういった広報活動という面で、少なからず当社にとってはプラスになっていると思っています。


―社内的な効果はいかがですか。

社員にとっては、特別何かをがんばったから認定がもらえた、ということがありませんでしたので、あまり告知しておりません。社外で認定によってご評価いただいていることに比べますと、社内PRが足りないように思いました。社内へのPRには、福利厚生面を整えていくことが必要で、自らのハードルを高めていくなかで行っていきたいと思っています。


―今後もハードルを高めていかれるのですね。

ユースエールの認定をいただいたからこれでいい、というわけではありませんので、福利厚生面、社員教育なども、もっとレベルを上げていく必要があると受け止めています。

簡単なことではありませんが、取り組まなければいけない課題ですので、進めていきたいと思っています。



雇用管理や人材育成
―雇用管理で注力していることはありますか。

製造の現場が10ほどの班に分かれており、各班の班長が時間外労働などのコントロールを行っております。

各班で応援が必要な場合は班をまたいで調整を行っていて、小集団的なグルーピング、いわゆるアメーバ経営のような体制を組んでいます。どこかの班が突出して残業が多いようなことが極力ないように調整しております。


―人材育成についてはいかがですか。

一番重要なことは「歯車を作るための技能を、いかに継続的に高めていくか」という点です。

当社のビジネスは100%受注生産で、様々なお客さんのニーズに応えるためには、現場のスキルがなければ対応できません。会社の一番の生命線として、人材育成には取り組んでおります。


―どのように取り組まれていますか。

技能士は国家資格で、筆記試験と実技試験とあります。会社の方で教育の機会も、受験費用も負担して技能士試験に臨んでもらっています。

例えば「機械加工特級技能士」は、工場長クラスのスキルを持っている人で、当社には10名おります。「1級技能士」は入社10年くらいのレベルの人です。この技能士の育成を軸に人材育成をしているのが、当社の特長になります。

歯車の歯を切る機械をホブ盤といいますが、「ホブ盤作業1級技能士」が38名もいるのは、日本でもトップだと自負しております。

こうした歯車を作るプロを「ハグルマン」と名づけまして、新卒採用のパンフレットには「一人前のハグルマンを育てます」と載せました。

国内で歯車の製造で勝負していくためには、プロでなければいけませんし、また職場環境の整備も必要です。そういう取り組みには力を入れて行っているつもりです。


ページトップページトップへ戻る